リハビリテーションマネジメント加算の算定要件 (平成27年改定)


 通所リハビリや訪問リハビリでは,リハビリテーションマネジメント加算を算定することができます。平成27年度にリハビリテーションマネジメント加算を含めた介護報酬の改定が行われたので,ここではこの加算の算定要件の詳細を説明します。

リハビリテーションマネジメント加算とは

 リハビリテーションマネジメント加算は通所リハビリや訪問リハビリで算定できる加算です。厚生労働省より平成27年3月に交付された「リハビリテーションマネジメント加算等に関する基本的な考え方並びにリハビリテーション計画書等の事務処理手順及び様式例の提示について」にその基本的な考え方が記載されています。

 その公布文によると「リハビリテーションマネジメントは,調査 (Survey),計画 (Plan),実行 (Do),評価 (Check),改善 (Action)のサイクル (以下「SPDCA」という) の構築を通じて,心身機能,活動及び参加について,バランス良くアプローチするリハビリテーションが提供できているかを継続的に管理することによって,質の高いリハビリテーションの提供を目指すものである」とされています。

 つまり利用者に対するリハビリテーションの提供状況を計画建てて行うこと,また,その効果を評価して計画の再編を行うことが質の高いリハビリの提供に繋がるという考え方です。それらのプロセスが適切に行わせることに対して加算が発生します。

リハビリテーションマネジメント加算の単位

 リハビリテーションマネジメント加算の単位は通所リハビリと訪問リハビリでは異なります。以下に分けて提示するので参考にして下さい。

通所リハビリ

報酬項目
単位
備考
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)/ 月
230
親設
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)/ 月 開始日から6月以内
1,200
新設
開始日から6月超
700
新設


 従来は,リハビリテーションマネジメント加算が230単位/月,訪問指導等加算が550単位/回(月1回を限度)と,別々に設定されていましたが,本改正から訪問指導等加算はリハビリテーションマネジメント加算に包括されて廃止となりました。

訪問リハビリ

報酬項目
単位
備考
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)/ 月
60
親設
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)/ 月
150
新設


 本改正から「訪問介護と連携加算 300単位/3月に1回」はリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)に統合されました。

リハビリテーションマネジメント加算の算定要件

 リハビリテーションマネジメント加算は,(Ⅰ) と (Ⅱ) で目的や算定に必要な要件が異なるので注意して下さい。リハマネ加算の(Ⅰ)は必要な書類数も少なく,計画書の作成や同意に医師が必須ではありません。一方で,リハマネ加算の (Ⅱ) では会議録やプロセス管理表など必要書類が増えて,算定に必ず医師が必要になります。(Ⅰ) に比べて (Ⅱ) では算定するための条件がかなり高くなっています。

人員配置

 リハビリテーションマネジメント加算では,特に人員配置について定められていません。これはリハビリテーションマネジメント加算がそのプロセスを重視したものであって,プロセスさえ適切に行われていれば加算の対象となります。ただし,プロセスの過程で医師およびリハビリテーション関連スタッフ(PT,OT,ST)が必ず必要になります。

必要な評価と計画書の作成

 まず,通所リハビリテーションを新規で開始してから1月前以内に居宅を訪問し,事業所の医師又は医師の指示を受けたPT,OT又はSTが,診療,運動機能検査,作業能力検査等の評価を行います。

 開始日から6月以内の場合は1月に一回以上,6月を超える場合は3月に一回以上の頻度で,他職種共同でのリハビリテーション会議を開催し,リハビリテーション計画を見直さなければなりません。リハビリテーションマネジメント加算に必要な評価や計画書は以下のようになります。

リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)

評価・計画書
概要
興味・関心チェックシート
利用者のニーズを把握するためのツールです。算定には利用者のニーズを把握することが義務付けられています。
訪問・通所リハビリテーション計画書
(アセスメント)
リハビリテーション計画の方針を決めるためのアセスメントツールです。
訪問・通所リハビリテーション計画書
リハビリテーション計画を記載するための計画書です。他職種共同で作成します。

重要:計画書の説明と同意はリハビリテーション専門職(PT,OT,ST)で可能です。

リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)

評価・計画書
概要
興味・関心チェックシート
利用者のニーズを把握するためのツールです。算定には利用者のニーズを把握することが義務付けられています。
訪問・通所リハビリテーション計画書
(アセスメント)
リハビリテーション計画の方針を決めるためのアセスメントツールです。
訪問・通所リハビリテーション計画書
リハビリテーション計画を記載するための計画書です。他職種共同で作成します。
リハビリテーションカンファレンス会議録
カンファレンスの会議録です。
プロセス管理表
リハビリテーションマネジメントのプロセスが問題なく行われているかチェックする書類。
生活行為改善リハビリテーション計画書(必要に応じて作成)
生活行為改善リハビリテーション加算を算定する場合に必要になる計画書です。

重要:計画書の説明と同意は医師でなければなりません。

リハビリテーションの実施と記録

 個別訓練の実施時間については定められていません。内容として医師又は医師の指示を受けたPT,OT若しくはSTは,利用者ごとのリハビリテーション計画書に従い,理学療法,作業療法,言語聴覚療法などのリハビリテーションを実施することが定められています。また,介護支援専門員(ケアマネ)を通して,家族や他事業所に情報を提供することもリハビリテーションに実施に含まれます。

 もともと指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準(居宅基準)で日々のサービスの記録が義務付けられています。そのため,リハマネージメント加算を算定しているからといって,日々のリハビリテーション実施記録にその旨を追記する必要はありません。

算定要件条文の原文

 詳しい算定要件を知りたい方は,「介護報酬改定に関する通知の改正案(原案)」を参照して下さい。一応,通所リハビリと訪問リハビリにおける算定要件に関する部分のみ以下に抜粋して記載しておきます。また,上述の算定要件では「リハビリテーションマネジメント加算等に関する基本的な考え方並びにリハビリテーション計画書等の事務処理手順及び様式例の提示について」に書かれた内容も参考にしています。特に引用はいたしませんが,必要があればこちらも参照して下さい。

リハマネ加算(Ⅰ):通所リハビリ

① リハビリテーションマネジメント加算は一月に四回以上通所している場合に、一月に一回算定するものとすること。ただし、指定通所リハビリテーションの利用を開始した月にあって、 個別リハビリテーション又は認知症短期集中リハビリテーションを行っている場合にあっては、四回を下回る場合であっても、算定できるものとする。

② リハビリテーションマネジメントは、利用者ごとに行われるケアマネジメントの一環として行われることに留意すること。また、個別リハビリテーションは、原則として利用者全員に対して実施するべきものであることから、リハビリテーションマネジメントも原則として利用者全員に対して実施するべきものであること。

③ リハビリテーションマネジメントについては、以下のイからヘまでに掲げるとおり、実施すること。

イ) 利用開始時にその者に対するリハビリテーションの実施に 必要な情報を収集しておき、医師、理学療法士等、看護職員、 介護職員その他職種の者(以下この項において「関連スタッ フ」という。)が暫定的に、リハビリテーションに関する解 決すべき課題の把握(以下この項において「アセスメント」 という。)とそれに基づく評価を行い、その後、多職種協働 により開始時リハビリテーションカンファレンスを行ってリ ハビリテーション実施計画原案を作成すること。また、作成 したリハビリテーション実施計画原案については、利用者又 はその家族に説明し、その同意を得ること。なお、通所リハ ビリテーションにおいては、リハビリテーション実施計画原 案に相当する内容を通所リハビリテーション計画の中に記載 する場合は、その記載をもってリハビリテーション実施計画 原案の作成に代えることができるものとすること。

ロ) リハビリテーション実施計画原案に基づいたリハビリテー ションやケアを実施しながら、概ね二週間以内及び概ね三月 ごとに関連スタッフがアセスメントとそれに基づく評価を行 い、その後、多職種協働によりリハビリテーションカンファ レンスを行って、リハビリテーション実施計画を作成するこ と。なお、この場合にあっては、リハビリテーション実施計画を新たに作成する必要はなく、リハビリテーション実施計画原案の変更等をもってリハビリテーション実施計画の作成 に代えることができるものとし、変更等がない場合にあって も、リハビリテーション実施計画原案をリハビリテーション 実施計画に代えることができるものとすること。また、作成 したリハビリテーション実施計画については、利用者又はそ の家族に説明し、その同意を得ること。なお、短期集中リハ ビリテーション実施加算及び認知症短期集中リハビリテーシ ョン実施加算を算定している利用者については、病院等から の退院(所)日から起算して一月以内の期間にも、アセスメ ントとそれにもとづく評価を行うこと。また、リハビリテー ションカンファレンスの結果、必要と判断された場合は、利 用者の担当介護支援専門員を通して、他の居宅サービス事業 所に対してリハビリテーションに関する情報伝達(日常生活上の留意点、介護の工夫等)や連携を図るとともに、居宅サービス計画の変更の依頼を行うこと。

ハ) 利用を終了する前に、関連スタッフによる終了前リハビリテーションカンファレンスを行うこと。その際、終了後に利 用予定の居宅介護支援事業所の介護支援専門員や他の居宅サ ービス事業所のサービス担当者等の参加を求めること。

ニ) 利用終了時には居宅介護支援事業所の居宅介護支援専門員 や利用者の主治の医師に対してリハビリテーションに必要な 情報提供を行うこと。

ホ) 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する 基準第百十九条において準用する第十九条に規定するサービ スの提供の記録において利用者ごとのリハビリテーション実 施計画に従い医師又は医師の指示を受けた理学療法士等が利 用者の状態を定期的に記録する場合は、当該記録とは別にリハビリテーションマネジメント加算の算定のために利用者の 状態を定期的に記録する必要はないものとすること。

ヘ) 新規にリハビリテーション実施計画を作成した利用者に対 して、医師又は医師の指示を受けた理学療法士等が、通所開 始日から起算して一月以内に当該利用者の居宅を訪問し、利 用者の身体の状況、家屋の状況、家屋内におけるADL等の 評価等を確認することを趣旨として診察、運動機能検査、作 業能力検査等を実施すること。その際、必要に応じて居宅で の日常生活動作能力の維持・向上に資するリハビリテーショ ン計画を見直すこと。

④ リハビリテーションマネジメント加算はリハビリテーション実施計画原案を利用者又はその家族に説明し、その同意を得ら れた日の属する月から算定を開始するものとすること。

リハマネ加算(Ⅰ):訪問リハビリ

① 訪問リハビリテーション計画(指定居宅サービス等基準第八十一条第一項に規定する訪問リハビリテーション計画をいう。以下同じ)の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて当該計画を見直していること。

② 指定訪問リハビリテーション事業所(指定居宅サービス等基準第七十六条第一項に規定する指定訪問リハビリテーション事業所をいう。以下同じ)の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、介護支援専門員(法第七条第五項に規定する介護支援専門員をいう。以下同じを通じて、指定訪問介護の事業その他の指定居宅サービスに該当する事業に係る従業者に対し、リハビリテーションの観点から、日常生活上の留意点、介護の工夫等の情報を伝達していること。

リハマネ加算(Ⅱ):通所・訪問リハビリ共通

上記のリハマネ加算(Ⅰ)の要件に加え、以下の項目を満たす。

① リハビリテーション会議を開催し、目標やリハビリテーションの内容を、通所リハビリテーション事業所(又は訪問リハビリテーション事業所)の職員の他、介護支援専門員、居宅サービス計画に位置づけた指定居宅サービス等の担当者、その他関係者と共有すること

② 通所・訪問リハビリテーション計画は、医師が利用者又はその家族に対して説明し、同意を得ること

③ 開始月から6月以内の場合は1月に1回以上、6月を超えた場合は3月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、通所・訪問リハビリテーション計画を見直していること

④ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供をすること

⑤ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、家族若しくは指定訪問介護等の指定居宅サービスの従業者に対し、利用者の居宅で、介護の工夫及び日常生活上の留意点に関する助言を行うこと

⑥ 1から5のプロセスについて記録すること

まとめ

 リハビリテーションマネジメント加算は,通所リハビリや訪問リハビリで算定できる加算です。平成27年度の改定によって報酬は増額しましたが,一方で算定要件は厳しくなりました。概ねどの要件も生活期に必要なリハビリテーションという視点で考えると必要な要件のように思えます。ただし,リハマネ加算(Ⅱ)で医師による説明と同意が必要な点はどこの施設でも高いハードルとなるでしょう。もう少し現実的な要件に整えられてくると質の高いマネジメントが可能となるのではないでしょうか。