心筋の収縮と弛緩


 心筋は骨格筋とは別のメカニズムで収縮と弛緩を行います。今回は,心筋の筋線維がどのように収縮するかについて,その構造やメカニズムを中心に学習しましょう。

心筋細胞の構造

 心筋細胞は複数で網目状に連結してネットワークを形成しています。隣り合う心筋細胞はギャップ結合と呼ばれる特殊な結合で結ばれています(図1)。ギャップ結合は電気抵抗が低く,活動電位(興奮)が伝わりやすい構造をしているため,活動電位の経路となっています。ギャップ結合は骨格筋にはなく,心筋と平滑筋に特有の構造です。


 心筋細胞は骨格筋と同様に「横紋」があります。つまり,内部に複数の筋原線維があり,太いフィラメントと細いフィラメントが配列して筋節を形成しています(図2)。また,細胞膜上には横行小管(T管)があり,隣接して筋小胞体が存在します。


心筋の収縮・弛緩メカニズム

 心筋の収縮機構は概ね骨格筋のものと同様です。大きな流れは骨格筋の収縮と弛緩」を参照して下さい。骨格筋と違う点は筋小胞体の活動の仕方です。骨格筋ではT管のカルシウムイオン(Ca2+)チャネルが開くと,筋小胞体のCa2+チャネルが連動して開きCa2+が放出されます。

 一方で,心筋細胞では直接Ca2+がT管を通り抜けて,筋小胞体のCa2+チャネルを開きます。このような作用機構をCa2+誘発性Ca2+放出と呼びます。このとき,T管に入り込んだCa2+の数倍の量のCa2+が放出されます。

 その後の反応は骨格筋と同様です。トロポニンCに筋小胞体から放出されたCa2+が結合して,ミオシンとアクチンが結合可能な状態になり,結果として心筋の収縮が起こります。収縮を終えた後は,Ca2+ポンプによって細胞質内のCa2+が筋小胞体に取り込まれ,心筋は弛緩します。

心筋の収縮速度
 心筋も骨格筋と同じ横紋構造を持つため,かなり速い速度で収縮します。心筋の単収縮の速さは1秒以内といわれています。骨格筋の0.1秒以内に比べると遅いですが,平滑筋だと1分以上も収縮が持続することがあることを考えると,その速さが伝わると思います。心筋は血液を安定して全身に供給するために,安定しつつも強い収縮を起こさなければならず,骨格筋は動作を行うために速くて力強い収縮を必要とします。平滑筋は消化管の筋組織なので,安定してゆっくりと持続的に収縮しなければなりません。それぞれの筋組織は必要な機能や役割に応じた構造になっているのです。

まとめ

 心筋もまた骨格筋と同じ横紋筋です。横紋構造は筋収縮が速く,強い力を発揮できます。一方で,心筋は骨格筋と異なり,細胞どうしがギャップ結合という特集な結合で結ばれています。ギャップ結合は心筋以外では平滑筋にみられる構造です。つまり,心筋は骨格筋と平滑筋の構造を併せ持つ組織といえます。

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