体性感覚に関わる上行性神経伝導路


Charcot(@StudyCH)です。

われわれが感じる体性感覚(つまり触圧覚、痛覚、温度覚、深部覚)は、身体各所にある感覚受容器から脳まで伝えられます。

この記事では、パチニ小体や自由神経終末など体性感覚の感覚受容器と脳とをつなぐ上行性神経伝導路について説明します。

神経伝導路とはなにか?

神経系には中枢神経系と末梢神経系とがあります。これらは、いくつかの神経細胞を介して結ばれて、互いに情報の交換をしています。

神経細胞から神経細胞への情報の通路を神経伝導路といいます。神経伝導路には、主に筋に向かう下行性の経路(運動神経系)と、身体各所の感覚受容器から脳へ向かう上行性の経路(感覚神経系)があります。

感覚受容器から脊髄(または延髄)へ

感覚受容器には、触圧覚を受容するもの、深部覚を受容するもの、温冷覚を受容するもの、痛覚を受容するものがあります。これらの受容器から得た情報は、末梢神経を伝わり、脊髄神経節を通って脊髄の後根に至ります。脊髄(あるいは延髄)内で2次ニューロンにシナプスして情報をさらに上方へ伝えていくことになります。

脊髄(または延髄)から視床へ

2次ニューロンの経路には後索路系、脊髄視床路、三叉神経伝導路、脊髄小脳路、脊髄網様体路があります。以下にそれぞれについて説明していきます。

後索路系

触圧覚、振動覚、深部覚を伝えます。脊髄に入った後に同側の後索を上行して、延髄の後索核(薄束核、楔状束核)でニューロンをかえて(2次ニューロン)、交差して内側毛帯となり、視床腹側後外側核(VPL核)に到達します(図1参照)。

図1 後索路系

後索路系では、脊髄に入った末梢神経が、すぐにニューロンを変えるのではなく、延髄後索核まで上行する点がポイントです。

脊髄視床路

温度覚、痛覚、一部の触覚を伝えます。脊髄に入った後に脊髄後角でニューロンをかえて(2次ニューロン)、交差後に反対則の前側索を上行して、視床の後腹外側核、後核群、髄板内核群などに到達します。

図2 脊髄視床路


三叉神経伝導路

顔面、口腔や舌の感覚を伝えます。これらの感覚は脳神経である三叉神経によって伝えられ、三叉神経核は主知覚核と脊髄路核に分かれます。主知覚核は後索路系でいうところの後索核に相当し、視床腹側基底核群の後内腹側核に向かいます。また、脊髄路核は、脊髄視床路でいうところの脊髄後角に相当し、後腹内側核や髄板内核群などに投射します。

脊髄小脳路

脊髄小脳路は、深部覚を脊髄から直接小脳に伝えます。この経路は意識に上らないような筋紡錘や腱器官からの情報を伝え、姿勢や運動の調節に関係しているといわれています。この経路には以下のようなものがあります。

1. 楔状束小脳路(CCT)

上肢からの深部感覚を小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

2. 後脊髄小脳路(DSCT)

下肢からの深部感覚を小脳中間部の皮質に伝える(非交叉性)

3. 吻側脊髄小脳路(RSCT)

上肢からの深部感覚を小脳虫部の皮質に伝える(非交叉性)

4. 前脊髄小脳路(VSCT)

下肢からの深部感覚を対側小脳虫部の皮質に伝える(交叉性)

図3 脊髄小脳路


脊髄網様体路

触覚、痛覚、温度覚などの情報を脳幹網様体に伝え、意識水準の維持・調節、姿勢の維持や歩行など自動運動の調節、あるいは怒りや恐れなど情動行動の誘発に関与します。この経路は自律神経系の活動に大きく影響を及ぼします。

視床から大脳皮質へ

体性感覚受容器からの情報はほぼ全て視床に至ります。視床には多数の核があって、上行性伝導路によって到達する核も異なります。視床に届いた情報は、その後、大脳皮質に到達します。そこで初めて、われわれは届いた情報を感じることができるのです。

まとめ

体性感覚に関わる上行性神経伝導路は、伝える感覚情報によって複数の経路に分けられ、それぞれが異なった道を通り、そのほぼ全てが視床を通って大脳皮質に向かいます。

われわれは患者さんの様々な動作にアプローチします。また、円滑に動作するには体性感覚情報が必要です。私はそれらの情報がどのような経路で脳に向かっているのかを学ぶことが動作を理解する上で大切だと考えています。

それでは皆さまの学習がよりいっそう充実することを願って。